ん、あ、由美子は声を上げた。
「先輩、大丈夫ですかぁ〜?起きて下さいよう〜。」
本山の声に目が覚めた。
夢を見たんだな、と、そう分かった。
「おい、本山、もう少し寝かしてやれよ。」と後部座席から気だるそうに迫田が声をかける。
「だって、苦しそうで〜。」
と本山が言うと、いつの間にか起きて座っていた迫田は
「お前は分からんだろうがな、刑事ってぇのは見かけより疲れてるもんだ。片品だってもしかしたら今日休み欲しかったんかも知んねぇぞ。」
運転している本山が目を前方を見据えながら頷いている。
「迫田さん、心配かけました。すみません。」
、しかし、何だって皆、休暇取りたいの分かるんだ?
とてもバツが悪い。
車は高速を降りていた。現場はもうそう遠くでは無い。
だが、何て言う夢を見てしまったのだろう、と由美子は思った。
今迄の夢では無い。続きだ。
樹枝が幾らか身体も大きくなって季節は夏。
あの雰囲気は小学校の夏休みなのだろう。
親指が出ていたあのズックはあの時のに違い無い。
なら、樹枝は小学生になって初めての夏休みなのだろうか。
そうだとしたらきつくなったあのズックを、かなり我慢した事になる。
胸が苦しくなる位我慢してやっと透子に切り出したのにあの仕打ちは怒りに任せ、樹枝が死んでも
構わない、そんな感じだった。
あれは事件だ。
あれから彼女は死んでしまったのだろうか。警察が動いたのは間違い無いのだが。
そしてあの警察官の中に由美子は思わぬ人の声を聞いた気がする。
それは若い声だが確かに伊藤巡査の後ろから聞こえた声は我が父の物にに違い無い。
雅子の父と由美子の父は茨城県の源清田東警察署時代に捜査課で同じ班だったと聞いている。だから伊藤のおじ様と今でも付き合いが在るのだ。
とすればあれは茨城県での事なのか。
あの状態なら透子は幼児虐待殺人未遂と、幼児遺棄現行犯として逮捕されただろう。もし、この夢が現実に起きた事なら記録を辿れば判明は可能だ。
だが、其れが現実であるのか単なる夢であるのか、どうして樹枝の夢を見るのか。それも続き迄有って。
考えれば考える程其れが解せ無かった。
白骨遺体
現場は真壁村の八世帯の集落の裏山で起きた。
高尾山の三分の一位の山では有るのだが、豊かな木々が枝を伸ばしおり、目に新緑が染みる。
住人所有の山々が幾つか連なるとても長閑な所だ。
10に続く